（出席者）

任明輝：　国家衛生・計画出産委員会　国際合作司司長
梁万年：　国家衛生・計画出産委員会　衛生応急弁公室主任
楊維中：　中国CDC副主任
Keiji Fukuda：　WHO衛生安全・環境事務局長補
Michael O'Leary：　WHO駐中代表
Nancy Cox：　WHOアトランタ・インフルエンザ共同センター主任
Angus Nicoll：　欧州CDC首席科学者
Malik Peiris：　香港大学WHO実験室研究員
Anne Kelso：　WHOメルボルン・インフルエンザセンター主任

CNN：

鳥インフルエンザウイルスH7N9人感染確定症例はこれまでに100件を超えており、すでに20件以上もの症例がこのウイルス感染で死亡　している。トリインフルエンザ感染において、この死亡率は平均レベルより高いのか。現在はどのような状況なのか。

Fukuda：

一般的に、鳥インフルエンザウイルスの病原性は比較的高い。典型的な例が高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1である。H7N9は目下のところ死亡率が比較的高い。しかし現在我々が目にしているのは最も厳しい症例であり、おそらく比較的軽微な症例や発見されていない、あるいは人の死亡を引き起こさないものもあるだろう。したがって今の段階で、今あるデータからだけでは、このウイルスの死亡率あるいは罹患率について、正確な回答を出すことは難しい。これが中国とWHOがこの新型のウイルスを非常に重視している理由でもある。我々がなぜこれだけの短い時間内でこれほど多くの専門家を結集させ、共同視察を行ったかといえば、現在多くの不確定部分があり、このウイルスに対する理解が非常に少ないからである。最後に、中国ですでに行われている研究や調査はこのウイルスに対する我々の理解に役立つであろう。今後数カ月の間に、中国の研究や調査が我々にこのウイルスの状況をさらに理解させてくれるものと確信する。

ロイター：

二つご質問したい。一つ目は高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1に比べて、H7N9は人人感染を引き起こしやすいのかどうか。二つ目は、皆さんが調査した鳥類はどんなものか。鶏、鴨などの鳥類に限られているのか、あるいはその他の鳥類も調査したのか。

Fukuda：

まず一つ目の質問にお答えする。二つ目の質問には私の同僚がお答えするだろう。一つ目の質問に対して強調したいのは、現在この疾病およびウイルスに対して我々の知識は依然として初期段階にあるということである。現在までのデータでは、H7N9がH5N1に比べて鳥類から人へ感染しやすいようである。しかし、これはあくまで現時点における推論である。今後、このウイルスに対して多くの研究がなされ、その感染性について明確な理解が進ものと考えている。

Cox：

Dr. Fukudaと同じように私も、現在この疾病およびウイルスに対して我々の理解は依然として初期段階にあり、なお未知の部分が多く、今後さらに新たなエビデンスや事実が分かってくるだろうということを強調したい。人類の健康だけでなく動物の健康においても同様である。これまでに農業部門と林業局は鳥類のサンプルを数多く採集している。目下採集されたサンプルの状況から見て、飛来した渡り鳥やその生息地の中にはH7N9陽性のサンプルは無かった。我々が確認した陽性サンプルはすべて生きた鳥類市場の鶏、鴨、ハトからのものだった。鳥類市場の環境サンプルにも陽性のものが見られたが、陽性の比率はわりと低いものであった。したがって我々が把握している限定的な情報から下せる結論としては、現在のところ、このウイルスは鳥類からのものであり、主に生きた鳥類市場からのものということだ。

京華時報：

ここ数日新たな症例は多くでていない。上海でも新症例は数日間出ていない。むしろ当初症例の出ていない北方の都市から新たな症例が出ている。これはある種の趨勢を表しているのか。気候や渡り鳥の飛来ルートと関連があるのか。

梁万年：

ご存知の通り、最も早い症例の発見は主に長江デルタ地域だった。この20数日間、流行地域は次第に拡大し、現在は7つの市と省で鳥インフルエンザウイルスH7N9人感染症例が発生している。これらの症例は先ほどDr. FukudaとMs. Nancy Coxがご紹介したように、ウイルスの感染源については、現行の資料から見るとウイルスに感染した鳥類あるいはウイルスに汚染された環境に由来する。北京、山東、河南省などから症例が出たことについては、我々も農業部門、林業部門と共に検査を進めており、衛生部門も人に対するモニタリングを強化している。我々の基本的な判断は、感染源が明確になる前、あるいは感染源が有効にコントロールできるまでには、散発的な症例は引き続き発生し、発生地域も拡大する可能性があるということである。現在までのデータから見ると、100以上の症例のうち、ほとんどが散発的な発生だということだ。今後重要なことは、Dr. Fukudaの言われる通り、動物と人のモニタリングを強化し、感染源を明らかにすることである。

Kelso：

（前略）上海において新症例の発生が下降していることは、喜ばしい。これは上海市政府が、4月6日に生きた鳥類の取引市場を閉鎖したことと密接に関連すると考えている。市場を閉鎖した後、新症例の増加は緩やかになった。今後も新しい症例の報告が出てくると思うが、ウイルスの感染から発症までにはある程度の潜伏期間があるためである。これまでのデータからわかるのは、生きた鳥類市場の閉鎖は非常に有効な措置であり、ウイルス伝播のリスクを大幅に減らすことができたこと。また生きた鳥類市場は鳥インフルエンザウイルスH7N9人感染の主要な感染源だということだ。もちろん我々は警戒を緩めてはならない。（後略）

AP通信：

二つお尋ねしたい。一つ目は、先ほど鳥類から採集したサンプルは生きた鳥類の交易市場からのものとのことだが、農家の養鶏場からの採集はされていないのか。中国の農村には放し飼いの鳥類が多く見られる。このような農家の鳥類を監督管理することは非常に難しい。この方面のサンプル採集はされたのか。またこれに対してどのような措置を採ったのか。二つ目、これらの鳥類の監督管理には経済的な影響がともない、地方によっては経済的影響のために症例報告の動機づけが弱まると考えるが、どうすべきか。

Peiris：

鳥類サンプルの採集にあたって、農業部門は生きた鳥類交易市場とその環境サンプルだけでなく、養鶏場に関してもサンプル採集を行っている。私の知る限りでは800以上の養鶏場からサンプルが採集された。これまでに確認されている陽性サンプルは養鶏場からのものではない。一方、多くの養殖場から陽性サンプルが発見されてはじめてウイルスの増殖と変異が起こるわけではない、と言っておきたい。したがって、引き続き十分なモニタリングを行い、ウイルスの感染源を正確に把握することを希望する。二つ目の質問は、症例報告の公開性と透明度に関わるものである。衛生部門との意思疎通と同じように、動物の健康に関しても我々は農業部門と公開性をもち、率直で透明性の高い交流と情報交換を行っている。

新華社：

梁主任にお尋ねしたい。現在（訳注：震災のあった四川省）雅安の被災地で鳥インフルエンザウイルスH7N9人感染が起こる可能性があるかどうか。もしあるならば、その拡散を阻止する力があるのかどうか。

梁万年：

国家衛生・計画出産委員会は今のところ雅安地区を含む四川省から鳥インフルエンザウイルスH7N9人感染確定症例および疑い例の報告は受けていない。鳥インフルエンザウイルスH7N9人感染が発生して以来、当委員会は全国の公衆衛生システムと医療システムに対して指示を出している。公衆衛生システムに関して言えば、我々は全国範囲でインフルエンザ様症例と原因不明の肺炎に対し、モニタリングを強化している。医療システムについて言えば、各レベルの医療機関に、発熱外来におけるスクリーニング検査を重視するよう求めている。疑わしい患者や疑い例に対しては診断と検査を行う。理論上では、雅安地区で症例が出る可能性がある。現在までに当該地区から症例報告を受けておらず、農業部門からも動物や鳥類から鳥インフルエンザウイルスH7N9が検出されたという報告はない。我々衛生部門は関連部門と共に準備を怠らず、とりわけ被災地区では症例のモニタリング、発見、報告に関心を払っている。もし何かあれば、我々は即座に関連する診断治療措置、公衆衛生措置をとる。

NBC：

北京で、ウイルスに感染しても何の症状も出ない四歳男児の症例が報告されたが、これは喜ばしい事なのか憂慮すべき事象なのか。

Nicoll：

これは喜ばしい事象と考えている。この四歳男児の状況から、このウイルスに感染しても軽微な症状のみ、あるいは臨床症状の出ない人々のいることが分かった。我々が確認している比較的症状の軽微な症例は、大多数が児童である。これは喜ばしいサインである。またこのウイルスの致死率はそれほど高くないことが分かる。さらに励まされることには、現在までに発見されている症例のほとんどが散発的で、集中発生の報告も増えてはいない。つまり今のところ群発的な集中症例は現れていないということだ。Dr. Fukudaが強調されたように、目下の流行状況から継続的な人人感染はまだ見られないが、強調したいのは、このウイルスと感染状況に対する我々の理解はまだ始まったばかりであり、これからなすべき研究がたくさんある、ということだ。たとえば血清学的検査によって、このウイルスに対する免疫力を調べるなど、である。またこのような検査や研究は、中国国内のみならずその他の国や地域でも行うべきである。何度も強調するが、中国だけでなく世界各地において、我々はこのウイルスのモニタリング、研究、理解を深めていかなければならない。

新京報：

現在無症状のウイルス保有者が確認されているが、スクリーニング検査やモニタリングの範囲を拡大する必要はないか。もし拡大するならば、どの程度か。

楊維中：

現段階で、我々はすべての医療機関と共同で原因不明の肺炎のモニタリングを行っている。また全国のインフルエンザ指定病院、そしてインフルエンザ様症例のモニタリング条件が整っている医療機関と共に、インフルエンザ様症例のモニタリングと報告を行っている。症例が発生したり、ウイルスが発見された地域では、発熱と呼吸器症状のある患者に対して観察を強化している。もちろんウイルスの発見されていない地区や症例の出ていない地区においても、多くの医療機関が呼吸器症状や発熱症状のある症例に対してモニタリングを行っている。これが目下のモニタリングに関する方針である。

日時：

4月23日午後

司会：

上海市人民政府報道官　徐威

参加者：

WHO事務局長補代理　ケイジ・フクダ
中国CDC副主任　楊維中
上海市防控人感染H7N9禽流感疫情聯防聯控機制副総責任者、上海市衛生・計画出産委員会主任　徐建光
上海市CDC主任　呉凡
上海市動物疫病予防控制中心主任　劉佩紅

解放日報：

フクダ先生にお尋ねしたい。上海の防疫工作をどのように評価するか。効果があると思われたのはどのようなことか。上海の防疫工作に対し専門家からはどのような具体的な提案があるか。

フクダ：

（前略）我々の理解したところでは上海市政府は有効な措置を採っており、特異な症例が発生した場合、中国CDC等の機関とも共同して症例に対し全面的な分析を行い、関連する情報を各関係機関に迅速かつ広く伝えている。我々が得た情報によれば、感染は生きた鳥類の市場からでており、上海市政府は市民を保護し、感染を広げないように有効な措置を採っている。当初上海市政府が行った疾病に関する調査と公共衛生の対応措置はみな時宜を得た有効なものだった。我々は中国政府の要請を受け、今回のH7N9鳥インフルエンザ流行の防疫状況について総合的な評価を行う（ことを期待されている）が、目下我々の作業は進行中であり、最終結論には達していない。したがって今、結論を出すのは時期尚早であると考える。
また、本日午前中の会議で、我々もいくつかの重要な問題を取り上げた。我々が上海市政府に対して考慮を求めることについてである。まず市政府が引き続き今回の流行状況を重視していくこと。その次に衛生部門と農業部門が引き続き相互に共同作業を行い、また国内外の関係機関とも密接な連携をとりあうよう希望する。これらはすべて流行抑制のために非常に重要なことであるから。それから中国政府が引き続き情報の公開と透明性を確保するよう希望する。流行がもたらすリスクは広範囲に及ぶので、上海に限らず、情報の共有と公開を継続するよう望んでいる。

上海ラジオ
テレビ局：

フクダ先生にお尋ねしたい。2日間にわたる上海の視察で、上海CDCや公衆衛生臨床センターの専門家、学者と共にH7N9症例の臨床症状について検討をされたが、専門家の角度から見てこの新しい鳥インフルエンザウイルスは人から人へ感染を起こす可能性があるのか。

フクダ：

過去十数年の間に我々は鳥インフルエンザウイルスの研究で多くの経験を積んできた。もとは動物に存在していたウイルスが人に感染し、人が病気になるのを発見するたびに、我々は非常に気をもみ心配する。このウイルスが人から人へ感染するウイルスに変異するのではないかという心配だ。だからこそ、この度の流行に対して中国国内のみならず全世界において、我々は重大な関心を払い積極的な対応をするのだ。我々は一貫して人から人への感染を心配しているが、今のところこのウイルスが継続的に人から人への感染を証明する証拠はみられない。

フェニックス
テレビ：

フクダ先生にお尋ねする。先ほど、上海で、ある親子と別の家族の夫婦がH7N9に感染したとの話があったが、限定的な人人感染が起きているという可能性があるのではないか。ウイルスの特徴はその変異性にあるというが、このウイルスが将来、人人感染を起こす可能性があると考えるか。三つ目はウイルスの感染源について、一部の人には鳥類との接触歴がないことを示すデータがあるというが、このウイルスの感染源はどこで、どのような感染ルートだと考えているか。

フクダ：

（前略）いわゆる集中症例というのは一症例以上、数人であり、比較的近い場所で同じ時間内に発症する。ではこのような集中症例が出た場合、次のような問いをたてる。なぜこれらの人に、だいたい同じ時間に同じような疾病、同じような症状が現れるのか。先ず我々は同じような曝露歴がないかどうかをみる。いわゆる曝露とは疑わしい動物との曝露（接触）、疑わしい環境への曝露である。その次の問いは、このウイルスが人から人への感染を起こす可能性の証拠があるかどうか。上海で集中症例が起きてから、現地の調査部門はもちろんWHOも行動し、積極的に疫学調査を行っている。しかしこれまでのところ、まだ明確な答えはみつかっていない。
現在、いくつかの小規模な集中症例が起きている可能性はある。しかし限定的な人から人への感染なのかという評価は、今のところ明確な答えを出したり結論を出したりすることができない。このウイルスが人から人への感染を引き起こすのかどうか、我々はなんとしても注目し続けなければならない。これまでの、その他の鳥インフルエンザウイルスに関する調査や研究の中で、ある種の鳥インフルエンザウイルスは限定的な人人感染を起こすことが分かっている。しかし今までのところ、我々のあらゆる情報に基づいても、なぜこのように小規模な集中症例が発生しているかの解釈ができない。
あなたの2番目の質問である、ウイルスが絶え間なく変化し、そのつど変異していること。これが、我々がこのウイルスの変化に、そしてその変化が感染性にどのような影響を与えるかということに絶えず注意を払わなければならない理由である。それが感染力を増す可能性もあるし、感染力が弱まる可能性もある。だからモニタリングは非常に重要である。上海には非常に整ったモニタリングシステムが出来ており、新たな症例がないか随時監視している。上海医療界の臨床医たちも警戒感を持続し、異常な疑わしい症例があれば警戒を強め、分析と調査を行うことができる。
これまで私の言ったことは、あるウイルスが人人感染を起こすかどうかについて答える時に立てる問いであり、すべき事柄である。上海はこれらの面においてすでに有効な仕事を展開している。
この問題については、上海市動物疫病予防控制中心主任の劉佩紅女史が専門である。彼女にも答えて頂こう。

劉佩紅：

この問題について補足する。衛生部が鳥インフルエンザウイルスH7N9人感染を報告した後、農業部もすぐに専門家チームを派遣し、3月30日には上海へ到着し、上海の動物疫病予防機関とともに緊急に現地のサンプル採集を行った。これまでに15,000以上のサンプルを採集し、そのうち2,800以上を国家禽流感参考実験室（National Avian Influenza Reference Laboratory）へ送った。12,000以上のサンプルについては上海の動物CDCで検査を行った。現在、国家禽流感参考実験室で確認できたことは、分離された陽性サンプルが上海の生きた家禽卸売市場1か所と自由市場2か所のみに限られていたことである。その他の家畜家禽養殖場、養殖農家、数種の野性鳥類、屠殺場、豚・ペット・馬など数種の動物のサンプルからは陽性が確認されなかった。
これまでの検査結果からわかったことは、この病原が生きた家禽市場に集中していたことであり、上海政府は生きた家禽交易市場の閉鎖措置を行った。

ロイター
通信社：

二つお尋ねしたい。一つ目は先ほど話に出た、患者の半数は鳥類との直接的な接触歴がないということだが、ではこのような現象をあなた方はどのように見つけ、どのようにコントロールするのか。二つ目はH7N9感染者の入院および治療費は、政府が負担してくれるのか。この費用はどのように負担するのか。

徐建光：

医療費の問題については前回までの記者会見ですでに明らかにしたように、慣例に従い、主に医療保険でまかなう。また我々もすべての医療機関、医療従事者に対し、医療費のために患者の治療に影響を与えてはいけないと求めている。

呉凡：

あなたが先ほど言った、患者の半数は明確な鳥類との接触歴がないというデータはどこからきたのか。我々はそのような発表をしたことはない。先ほどある記者がその情報を取り上げたようだが、その根拠は何なのか。
現在ある32症例の統計から言えば、2件の症例については直接または間接的な鳥類との接触歴がないことが明らかになった。言い換えれば、その他の30症例は多かれ少なかれ鳥類との直接あるいは間接の曝露歴があった。つまり32人中30人は直接あるいは間接的にリスク因子との曝露や接触歴があったということだ。

時間：

2013年4月17日

場所：

国家衛生計画出産委員会5階会議室

司会：

宋樹立

出席者：

馮子健　中国CDC衛生応急中心主任
李興旺　北京地壇医院感染性疾病診療中心主任
諸宏明　元衛生部農衛司合作医療処処長

記者：

北京のスクリーニング検査で健康な人がH7N9ウイルスを保有していたという現象が発見されたが、キャリアとなったら必ず症状が現れるのか。もしスクリーニング検査で自分がキャリアと分かったらどうすればよいのか。今後、全国的にスクリーニング検査を行うのか。

李興旺：

この症例の状況については、時間が短いこともあり、ウイルスに感染した後に臨床症状が現れるか否かについて検証に時間がかかる。

馮子健：

現在、衛生計画出産委員会はスクリーニング検査を展開するよう要求していない。主な防御措置としては同委員会発布の防御方案の中で求めているモニタリングと防御措置の執行である。目下、我々が採用している各防御措置を変更しなければならないとは考えていない。流行発生地において行われている自発的なモニタリングは、私個人の観点では、奨励されるべきものと考えている。なぜならば、この疾病に対する情報には限りがあり、このような調査と研究を行うことは、我々がこの疾病の特徴を認識する上で助けとなるものである。

記者：

昨夜上海で遡及的診断症例が5件報告された。第五病院の4症例について具体的な状況は公布されるのか。上海の一家3人が原因不明の肺炎にかかった症例は含まれているのか。この数件はすべて第五病院のもので、これ以前に確定診断された症例を加えると6件となるが、人から人への感染力を新たに評価するものではないか。
この数件の症例は、先に検査測定された上海第五人民病院で発生した原因不明の肺炎患者であり、疾病が確認される前にサンプルを送っていたものである。当初、これらの症例の核酸検査は陰性であった。そのうち2件のサンプルからはH7N9ウイルスが分離された。その他2件はウイルスを分離できる有効なサンプルが得られなかった。その後、集められた2件の血清を検査したところ、四倍もの抗体が測定された。急性期の血清中の抗体タイター量は1:10より低いが、回復期の血清は四倍またはそれ以上に上昇したことから、H7N9ウイルスに感染していたことが確認された。この中にはご指摘のあった家族の、既に退院した長男も含まれている。彼は血清検査によって確定診断された患者である。このようにこの家族の三人の患者のうち二人は確定診断されたが、もう一人は死亡したためサンプルが採集できなかった。これは家族内の集中的な発症例で、父子3人が共に鳥類や汚染された環境にさらされたのか、または相互間で感染したのかは、目下調査中であり最終結論が出ていない。この家族内における症例の集中発生は、総体的に見てこの疾病の特徴に対する我々の認識を変えるものではなく、以前として鳥類から人への感染であり、人から人への感染の根拠はみあたらない。
（中略）

記者：

現在77症例のうち40％の人は鳥類との接触がない。調査の中で、伝播経路を含む感染源について（情報を）得る方法はまだないのか。その難しさはどこにあり、どのようにすれば確認ができるのか。確認しえない時点で、人から人へ感染するようにウイルスが変異してしまったら、我々はどう対応すればよいのか。

馮子健：

我々が疫学調査あるいは現場の調査をする場合、常に次のような困難がつきまとう。それはすべての患者がはっきりと曝露史を覚えているわけではないということだ。例えば鳥インフルエンザウイルスH5N1感染症例の中で、50％の人は明確に発症前の接触史を覚えていたが、その他50％は思い出せなかった。もう一つの困難は、患者が発見され訪問調査を行おうとした時には、すでに重篤な状況にあり、質問することができないことだ。だから曝露情報を得ることは大変難しく、快癒するのを待つか、家族に思い出してもらうしかない。しかし、患者の発症前の詳細な生活活動を他人から提供してもらうことは困難である。また、中には発症前の細かな活動や接触史を知られたくない患者もいる。このように、調査には様々な困難が存在する。だがそれは現在この疾病の伝播方式や感染源に対する我々の認識に影響するものではない。目下我々の推断は依然として鳥類から人への感染ということである。すなわち鳥類で汚染された環境にさらされた、あるいは直接鳥類に接触したことにより感染した、これが主なものである。非常に重要な認識としては、都市の生きた家禽市場においてその場で処理して販売することが、発症を引き起こす危険要素だということだ。みなさん食品市場でこんな経験があるだろう。生きた家禽の屋台にはだいたい羽を抜く設備があり、中には熱湯があり、鳥を入れて素早くかき回すとエアゾルが発生する。もしウイルスがあれば、その付近を通る人は吸入する可能性がある。これも我々が疑っている人感染の重要な曝露環境である。加工処理済みの食用鶏肉や卵が感染を引き起こしたという根拠はない。鶏肉や卵を衛生的に調理すること、十分加熱すれば安全である。一般的にウイルスのような微生物が、死んだ動物の体で生き延びることは非常に限定的である。
（後略）