来たる2022年1月中国・天津で行われる予定の国際的なフィギュアスケート競技大会「四大陸選手権」が中止になったことが報じられた。9月中旬のことである。これに先立ち、今年11月に重慶で開催されるはずだったフィギュアスケート・グランプリシリーズ第3戦「中国杯」も中止され、代替地イタリア・トリノで開催することが8月末に決まっていた。これらのニュースを見て、中国は「ゼロ・コロナ」で冬季オリンピックを迎えるつもりなのだなと感じた。
北京での冬季オリンピックは2022年2月4日から20日にかけて行われる。パラリンピックは3月4日から13日までだ。また2022年は中国最大の祝日である旧正月「春節」を2月1日に迎える。この約2週間前、つまり1月中旬から「春運」と呼ばれる帰省ラッシュが始まる。中国国内で人の流れが最大となる「春運」と、海外からのオリンピック・パラリンピック関係者の来訪が重なるこの期間に、新型コロナ感染症の流行を最大限に抑える措置が取られるはずで、天津と重慶での国際大会の中止はこの「前哨戦」ともいえよう。
「ウィズ・コロナ」を掲げて経済活動を再開した欧米と異なり、中国では依然厳しい抑え込み体制が敷かれている。9月10日に福建省で本土感染症例が見つかってから9月25日までに同省内では累計460名の陽性者が確認されているが、その90倍以上もの接触者44,176名が隔離下に置かれている。PCR検査を受けた人数はさらにその数倍にもなるはずだ。
北京の冬季オリンピックは主に3つの競技地区に分かれて行われる。2008年北京オリンピックで使用された競技施設を活用した「北京地区(英文表記:Beijing Zone)」、北京から180kmほど離れた河北省の「張家口地区(同:Zhangjiakou Zone)」、そしてその二つの地区の間に位置する北京市北西部郊外の「延慶地区(同:Yanqing Zone)」である。3つの競技地区は高速鉄道によって結ばれ、それぞれの地区に選手村が設けられており、選手と関係者が滞在する予定となっている。冒頭で触れた二つのフィギュアスケート競技会は、現在中国への国際線が限られていることと「バブル方式」の実現が難しいことを理由に中国側から中止を申し入れたそうだ。冬季オリンピックでは「バブル方式」を整備・強化し、選手や関係者の行動範囲は厳しく制限されるだろう。
(注:「バブル方式」とは、COVID-19の感染拡大を防ぐために国際的なスポーツ大会で採用され始めた、選手や関係者と外部の人との接触を遮断する方法。特に海外から来た選手・関係者の行動範囲を大きな泡=バブルで包むように隔離する)
観戦チケットはまだ販売されておらず、「北京2022」のホームページでは「北京2022組織委員会とIOCは、チケットの計画を引き続き進めているところです。COVID-19の日々変化する状況を鑑みながら、2021年末までにはより詳しい情報をお知らせする予定です」となっている。中国国内の感染状況によっては無観客になる可能性も残っているということだ。
現在、中国では新型コロナウイルスと季節性インフルエンザウイルスの同時検査キットが実用化され、全国の発熱外来や小児科外来に配布を始めたという。新型コロナのワクチンについても、航空、検疫・税関、隔離施設、医療機関関係者などの高リスク群を対象にブースター接種が検討されている。またインフルエンザ対策にも余念がなく、北京では9月22日から60歳以上の市民に対して無料の予防接種が開始され、10月からは小中学・高校生、そして重大イベント関係者へと順次インフルエンザの無料接種を行なっていくとの発表があった。
7月中旬、東京でのオリンピックに参加するため中国からやって来た選手達が日本の感染対策の甘さに不満を表明したと報じられたが、東京パラリンピック終了後わずか5ヶ月での開幕となる「北京2022」大会では、「東京2020」と比べどのような違いが生ずるのか注目される。